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人材の市場価値の高め方を考える

最近発売されたこちらの書籍を読んでみました。

自分自身、キャリア形成とかよくわかってないですし、こういうのは先人の"転職強者"の考えに習ったほうが早そうなので、今回はこちらの書籍を読んでみて学んだ転職強者の考え方について感じたことをメモっていきます。

市場価値

まず、転職というもののマーケット、転職市場というものについて考えてみます。 転職者は転職市場に商品として出され、企業がその商品を買うことで転職が成立する、そんなふうに考えることができます。

実際には、転職者も人間なので企業を選びますし、オファーを断ることだってあるわけで、その辺りが一般の商材の市場とは異なる部分と言えそうですね。

さて、商品である我々としては、なるべく高く値付けされて売られたほうが嬉しいわけです。 他の条件が同じなら高い給料でオファーされたいでしょうし、市場価値を高くするために付加価値をつけていくのは、転職もその他の市場でも同じことなのではないでしょうか。

この転職市場の特徴についてまずは考えてみます。

市場はどこにあるか

まず、転職市場とやらは、実際にはどこにあるんでしょう?

物理的な場所ではないことは確かですね。 ここで言う転職市場は、企業の採用担当者からアプローチできる環境すべてということが言えそうですね。

企業の求人に応募したら、その瞬間から転職市場に出たことになりますし、転職サービスに登録してスカウトを待っているのも市場に参加していることになりそうです。 また、特殊なケースではありますが、転職エージェントに登録するだけでも、企業からではないですが、エージェントから求人を紹介されるので、市場に出ていることになりそうですね。

また、最近では知人経由で採用されるリファラル採用もあるので、社外に知り合いがいるだけでも転職市場に出ていると言えなくはなさそうです。

逆にいうと、こうしたサービスに登録していない場合やには転職市場にうまく出れていないかもしれません。 市場に出てないものは、需要と供給のバランスで価値が判断される経済学的考えのもとでは、価値が判断できません。

まあ最近ではTwitter転職など、ダイレクトマーケティングによる転職もあったりするので、転職サイトに登録しなくてもマーケットに出ていると言えなくもなさそうです。 ただし、その場合であっても、市場価値を適正に把握しておかないと買い叩かれたりすることも考えられるので、何かしらの形で自分の適切な市場価値を把握しておくことは無駄ではなさそうです。

市場価値について考える

普通に市場原理が働くと考えれば、需要が多くて供給が少ないスキル・経験を持った人ほど、人材価値は高いと考えられます。 このへんまでは、「まあそうだよね」という感じですね。

問題なのは、需要が変化することでしょう。 業界や会社の規模によって変わってきますし、時代によって社会的に求められるスキルは異なります。 IT技術の進歩等で、10年前は存在していた職業が、今では需要が全くなくなるということも起こりえます。

これが何かを作って売っている普通の商材なら、商材を時代や環境に合わせて見直すことが可能で、もっと言えば事業の多角化によって多少の外部環境の変化には対応できるようにしているものです。 ところが、いま商材になっているのは自分自身です。 50代になって、ある日突然「あなたのお持ちのスキルはもう市場価値ゼロです」と言われても、自分という商品は一つしかないので、すぐに次の商材へ切り替えるなんてことはなかなか厳しいように考えられます。

ただこれ自体は悲観的になりすぎる必要もなさそうです。 なぜなら、無駄になる経験・スキルもあれば、依然として価値を持つ経験・スキルもあるわけです。 自分の市場価値を正しく把握していれば、価値が目減りしたスキルを見極めて対応することができます。

ある日突然すべてのスキルの価値がゼロになるわけではありません。 少しずつ、スキルや経験が一つずつ価値が目減りしていきます。 その間に別のスキルや経験を積んで、スキル・経験のトータルを掛け算的に見たときに価値が増加していれば問題なさそうですね。

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スキル

上で転職市場において、自分の持つスキルや経験が市場に置いて需要が高く・供給が低いときに、自分の市場価値が高く評価されそうだということはわかりました。

次にこのスキルというものについて、深堀りたいと思います。

スキルの種類

ソフトスキルとハードスキルは、評価の基準が明確であるかという点で異なるといえるでしょう。

ビジネスにおけるハードスキルとは、評価基準が明確なスキルを指します。具体的には、TOEICのスコアや弁護士・会計士などの資格、大学や大学院の学位などが該当します。

一方、ソフトスキルは定性的なスキルで、明確な評価の基準が存在しません。コミュニケーション能力やリーダーシップ、ファシリテーションスキル、問題解決能力など、内面的な性質に根づいたスキルを指します。 ソフトスキルとは?ハードスキルとの違いや身につける方法について | RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパン

スキルといって、ぱっと思いつくのは、資格試験等がある免許かもしれません。 また、ITエンジニアであれば、特定のものを作る際の言語やツールを使いこなせるかどうかかもしれません。 上の定義によれば、こういったものはすべてハードスキルということになりそうです。

一方、テストや作業スピードなどで測定することが難しいスキルも存在します。 特にコミュニケーションを円滑に進めたり、リーダーシップであったり、チームマネジメント経験であったり、こういったものはテストなどでは測ることは難しいですが、持つ人と持たない人では明確に違いが出る部分でもあります。 こうしたスキルはソフトスキルと呼ばれるようです。

さて、本書ではもう一つ、メタスキルと呼ばれるスキルが定義されています。

メタスキルとは・・・・・・新たなスキルを①選別、②習得、③応用するスキルである。 Work in Tech!(ワーク・イン・テック!) ユニコーン企業への招待

自分なりに解釈すると、

  • スキルは闇雲に身につけても効率が悪く、市場価値が高いスキルを見極めることが大事
  • 市場価値の高いスキルを見抜くスキルだけでも、ハードスキルやソフトスキルが身についてないと意味がない
  • メタスキルによって、効率よくスキルによって市場価値を最大化させることが重要

ってことですかね。

スキルを身につけたり活用すること自体にもスキルが必要で、スキルのポートフォリオを機能させる際に、このメタスキルは非常に重要になってきそうです。 価値あるスキルを見極めて高速で身につけていくことができれば、市場価値が常に高い最強ビジネスマンになれそうです。

スキルのポートフォリオを考える

ハードスキルとソフトスキルについて、市場価値を高くすることを考えます。 しかし、これらはその瞬間によって価値が変化していきます。

これは、株式市場における株価の変動に似ているように感じます。 ということは、自分のスキルについてもポートフォリオを組むことを考えられそうです。

結局のところ、どのスキルや経験の価値が将来高くなるのかは、不透明な部分が多いです。 今は需要が小さなスキルでも5年後に価値が跳ね上がることだってあります。 逆に、今は価値が高いスキルであっても、5年後に誰からも見向きもされないスキルもあるかもしれません。

我々は、単一のスキルだけを持っているわけではなく複数のスキルを同時に持つことができるので、どれか一つのスキルについて需要がなくなったとしても、別のスキルで立て直せば良いということがわかります。

この辺を考えるときはPPMをちょっといじったフレームワークで整理したら良さそうです。

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スキル自体の市場価値と、市場における自分のスキルがどの程度の位置づけなのかによって、4象限に分けられるかと思います。 花形・金のなる木・問題児のバランスを見つつ、どのスキルに自分の時間を投資していくかを考えていけば、どれか一つのスキルの価値が目減りしても他のスキルに投資を振り替えていく対応が取れるようになります。

自分が今最も競争優位で市場からも求められている花形に投資しつつ、これからの需要の増加を先読みして金のなる木のセグメントにあるスキルを育て、需要としては申し分なくあとは自分が頑張って競争優位に成長するだけの問題児を育て、負け犬の部分については見切りをつける。 自分のスキルについてもこうした投資戦略を考えていくことで、未来のスキルの需要の変化に対応しながら成長することができ、安定的に優位なポジションを取って市場価値を高いところに持っていくことができると考えられます。

実際には、市場からの需要とかそういうの抜きにして「単純に自分が興味あるからやる」「好きなスキルをとことん追求する」といったケースも多くあります。 私の観測範囲ですが、そういった内発的なモチベーションによって身についたスキルは質が良かったり重宝されたりしています。 市場の需給を参考にしつつ、自分の興味・得意を伸ばしていくのが良いのではないかなと個人的には思ってたりします。

スキルを多角化する

どのスキルに投資するかがきまったら今度はそれを身につける必要があります。 会社で働いていれば、一日の多くの時間は会社で働いているので、その時間内で身につけるのが効率的に思えます。

ただ、業務でスキルを多角化するのは、実はちょっと難しかったりします。 特に、大企業だと業務が細分化されていたりするので、畑違いの業務の知見はそもそも触れることすら少なく、身につけるのは難しい状況になっています。

ただ、やりようは考えられそうです。 社内留学制度・社内公募制度などがある場合は、それを活用するのも一つの手かもしれません。 英語を話すスキルが必要だと感じたら、海外とコミュニケーションを取る部署に行ってみれば良いですし、エンジニアリングのスキルが必要ならIT系の部署に行けば良さそうです。

また、副業でお金をもらいながら身につけるというのも一つの方法かもしれません。 最近は副業規定がゆるくなる流れがあるので、副業で普段身に付けられないスキルを身につけるのは、自分の市場価値という観点では副業収入以上に価値があるものになり得ます。

それでもできなければ、何かのスクールに通うでもいいですし、書店で参考書を買ってきて自分で勉強するでも可能だと思います。 何なら、その分野の社会人にあって話を聞いてみて、直接アドバイスをもらってもいいかもしれません。 そういったビジネスマッチングのツールも登場してきているので、視野を社外に広げればスキルの多角化を実現していくことは十分可能な世の中になってきています。

マーケティング

さて、ここまでで市場価値をどう高めたらよいかについてはなんとなく考えてみました。 ただ、いくらスキルを持っていたとしても、そのスキルを認知されなくては市場価値として評価されません。

これは、普通の商材におけるマーケティングの理論とやや似ています。 自分を適正な市場価値で売るということについて、ちょっと考えてみます。

AISASで考える

AISASのフレームワーク(昔だとAIDMAのほうが馴染みがあるかもしれません)のように、それぞれのファネルで自分という商材を顧客(企業)が買う前に離脱していっているのです。

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どのファネルで企業が離脱しているのか、数字で測ることは難しいですが、定性的にある程度把握することはできるかもしれません。 スキルを磨きつつ、このファネルの途中で自分を買う顧客(企業)が離脱しないようにできれば、自分の適正な市場価値を評価されることができるかもしれませんね。

まず企業に認知(Attention)される必要があります。 転職サービスに登録するもよし、TwitterなどのSNSにアカウントを作るだけでも企業の目にとまる可能性はゼロではないので、土俵にたったことになりそうです。

次に、企業に関心(Interest)を持ってもらう必要があります。 商品が露出していても、関心を持ってもらわなければ顧客は買おうとは思いませんよね。 自分の持っているスキルや経験をアピールして、顧客に興味を持ってもらう必要がありそうです。

その後、顧客は「もっといい商品があるんじゃないか」と比較検討したくなり、検索(Search)するようになります。 これも転職サイトなどで検索して比較することができる時代です。 また転職の選考プロセスなどで、比較検討されることもあるでしょう。 この見比べるという行為によって、本当にその商品が顧客にとって価値があるのかを判断されます。

そして、実際に行動(Action)として、オファーが出るわけです。 ここで初めて市場価値が形を成すんだと思ってます。 スキルというものが、お金に変換されて、金額提示される感じですかね。

さらに、実際に購入した人は購入した価値を評価し、共有(Share)します。 中途採用ならレファレンスチェック等がこれにあたったりするかもしれません。 ネガティブな反応はなかなか世に出にくいですが、ポジティブな評価はSNSなどで流れてきたりします。 こうして、価値は更に他人の評価によって更に形成されていくわけです。

こうして考えると、我々はただスキルが高いだけではダメで、それを世にアピールして認知・関心を持ってもらう必要があります。 そして、比較対象に比べて優れていることを示さなければならず、一緒に働いた生の感想を世に示すことが適正な市場価値として評価されるためには必要なのかもしれませんね。

人脈の本質

「自分には職に困っても頼りになる人脈がある!だからスキル磨きに注力すれば問題ない!」と考える人もいるかもしれません。 この人脈を作るってなんなんでしょう?ちょっと考えてみます。

人によっては、名刺交換して顔を知っているくらいの関係を人脈というかもしれませんし、場合によっては「会ったことはないけどSNSでつながっている」だけでも人脈と考える人はいるかも知れません。

ただし、上のような転職市場におけるマーケティングのモデルで考えるならば、人脈があるという状態は「名刺交換して連絡先を知っている」状態でもなければ、転職サイトでプロフィールを公開して「会ってみたい」と思わせることでもないと思ってます。

一緒に働きたいと思ってもらえる人がいる、というのがビジネスにおける「人脈がある」という言葉の意味として一番しっくりくると思ってます。 上のモデルだと、Shareの部分で適正にポジティブな評価を持ってくれる関係を人脈があると言えるのかなと思います。 (社交辞令的な話でポジティブな評価をすることもあり、適正に評価してくれることも重要だと思ってます)

この状態にするには、一定のスキルを持って自分が価値ある人材であると示さなければいけませんし、更にそれについて認知・関心をもってもらい適正に評価を下してもらう必要があります。 こうした関係は、いつか自分を評価して引き抜いてくれるかもしれませんし、自分が誘えばその人を採用できるかもしれません。

どんな経緯であれ「自分に対して適正かつポジティブな評価をしてくれる関係」は、転職市場で価値を持つ人脈と言えるのかもしれないなと感じました。

参考文献

この記事を書くにあたって、下記の文献を参考にさせていただきました。

www.rgf-professional.jp

www.pmaj.or.jp

www.macromill.com

drm.ricoh.jp

感想

最近は転職も当たり前の時代になってきていますし、世の中のすごい人はこんなことを考えているんだなと、素直に勉強になりました。

正直、本書にあったノウハウを自分に再現できるかと言われるとまだまだ難しそうと思ってますが、基本的な考え方については納得できました。 たまーに観測する化け物みたいなスペックの人はこうやって形成されてるのかなー、なんて思いながら読んでました。

特に安定して成長していくことを重視するという考え方はすごく面白い考え方ですし、「なるほどー」と思いましたし、他にも個人的に考えさせられることもたくさんありました。 2月にまた3連休もあることですし、キャリアに困っている方、本書を読んで色々考えてみてはいかがでしょうか?