2022年最初の3連休、外は寒いしコロナも怖いので、自宅に引きこもってます。 そんなわけで以前から興味があったこちらの本を読んでいました。
こちらの本を読んで、キャリア形成について考えてみたので、今回はその頭の整理です。 自分は別にキャリアコンサルタント・キャリアアドバイザーとかではありませんし、あくまで一意見として考えていただければと思います。
tl;dr;
書いてみたら思ったより長くなってしまったので、最初にまとめを書いておきます。
- これからの時代は自分のキャリアは自分で責任を持っていくようになるだろう
- 日頃から会社についての情報収集と自分のスキルについて情報発信していって、効率よく転職・副業を実現していくのがモデルケースになるだろう
- 優秀な社外の人と面識を持っていることが、採用の観点で一つの人材価値になるだろう
背景
まずは、この記事の前提となることを書いていきます。 それなりにニュースとか見てる方にとっては当たり前のことだと思いますので、適宜読み飛ばしていただければと思います。
この記事でトレンドとして気にしているのは
- 終身雇用制の崩壊
- メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ
の2点です。
終身雇用の崩壊
まず、昨今のビジネスの世界において、”終身雇用”という仕組み自体が崩れ始めつつあります。
2019年にトヨタの社長ですらこのような発言をしています。 他にも経団連の会長も同じ趣旨のことを言っていたりしますね。
終身雇用が崩壊するかどうかについて、信じるか信じないかは個人の自由で良いと思いますが、こうした流れがあるという事実は把握しておく必要がありそうです。
メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ
まず最初に、従来一般的だったメンバーシップ型雇用の特徴について確認します。
日本に根付いている「新卒一括採用」「年功序列」といった言葉が当てはまります。 新卒一括採用型は職種を限定せずに総合職として採用する場合も多く、職種や仕事内容をローテーションさせ適正を見極め、本人の希望等も取り入れつつ会社を長く支えていく人材を育てていく方針です。 ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いやメリット・デメリット | クリエイト転職
これが昨今では、旧来のメンバーシップ型雇用から最近ではジョブ型雇用にシフトする動きが見られます。
昨今でメンバーシップ型雇用が注目されている背景としては、下記のようなものが挙げられます。
- IT技術などを始めとするより専門的な人材が求められている
- 終身雇用が難しくなってきている
- テレワークが普及し、職務内容が明確化されている方が業務効率が高まる
- 同一労働同一賃金が導入された事によって、年功序列で賃金が上げにくくなった
一方ジョブ型雇用は、職務内容が事前に明確化されている方式のことを指します。
これによって、
- 企業
- 専門性の高い人材を採用できる
- 入社後のミスマッチの確率も低減できる
- 社員
- 決められた職務内容に専念できる
- 自分の求める専門性を磨きながら業務を遂行することができる
といった、両者にとってメリットがある方式になっています。 メンバーシップ型雇用ではその性質上専門職が育ちにくいという問題があり、今の情勢に照らし合わせるとジョブ型雇用のほうが昨今の時流に即した形と考えられます。
当然、これまでメンバーシップ型の雇用が浸透していたので、すぐにジョブ型雇用へ変わっていくかといえばそんなことはないと思いますが、そういった流れがあるというのが今の状況と言えます。
なにがまずいか?
ここまでをまとめると、
- これまで日本で根強く残ってきた「最初に入った会社で定年まで働いて退職」というモデルケースが成立しなくなりつつある
- ジョブ型雇用がこれから進んでいくと考えられ、それに伴い自分のスキルや経験を自分で選択していく必要がある
ということが言えそうです。
さて、ここからちょっと考えてみます。
就職活動等をしたことがある方なら、キャリアパスというものを考えたことがあるかもしれません。 キャリアパスは一般に、新卒で入社してから、企業内で社員が目標とするポストや職務に就くために必要な業務経験やルートといった道筋を表します。
終身雇用が成立しなくなると、複数の会社にまたいでキャリアを築くことが当たり前になるかもしれません。 また、ジョブ型雇用が進んでいくと、自分が身につけるスキル・経験をある程度自分で選んでいくということになります。 これまでのように、新卒で入社した会社で用意されたなにも考えずキャリアパスに乗っかっていれば安泰という状態は、次第に通用しなくなりつつあると思われます。
そうなっていくと、特定の会社にこだわらず、
- どんなスキルを身に着けるか
- どんな経験を積むか
- どんなキャリアのステップを歩んでいくか
について自分自身で責任を持つ必要が出てきます。
そんな世の中がこれからどんどんなっていくことが予想されていて、自分のキャリアについて考えること・自分のキャリアを形成していかないといけない時代がやってきつつあり、これについて何も考えてないのはマズいということになりそうです。
キャリアに関して一巡り
背景についての整理が終わったところで、今度はこれからのキャリア形成がどうなっていくか、本の内容を元にちょっと妄想してみたいと思います。
これからのキャリア形成を妄想する
多分こんな感じの状態が一つのキャリア形成のモデルケースなんだと思います。
まず、個々人でキャリア設計を持つことが求められると思います。 それは設計には必ずしも同じ会社の中だけではなく、複数の会社をまたいで経験を積んでも良いし、1社では得られない経験・スキルを副業で得ていくようなスタイルもあるでしょう。
そうした、キャリアの中で会社を変える・複数の会社に関わることが当たり前になってくると、応募する側から見て採用フローの効率化を考えるようになるでしょう。 新卒採用のように、転職などを思い立ってからoo社エントリーして…、みたいなことをやっているのは非常に非効率です。 可能な限り応募側・企業側で会社双方が、採用確率が高い経路でエントリーしたほうが応募する側のコストは小さくなりますしね。
こうした状況を作るには、転職しようと思ってから動いては遅いかもしれません。 そのことから、自分に関する”スキル・経験のタグ”を発信して、いつでも転職できるようになっていき、必要になったタイミングで効率的に転職や副業などに移るようなスタイルが浸透していくと考えられます。
日々、行っていくこととしては、下記のような感じになるかと思います。
こうやって、日頃から自分のキャリアの全体像を意識して、日頃からぼんやり世の中のキャリアに合った会社の情報収集をしつつ、良いタイミングがあったら転職や副業に動いて短期間で意思決定するというのが、一つのモデルケースと言えるかもしれませんね。
組織に縛られないキャリア設計
上で紹介したモデルケースのベースにあるのは、自分のキャリアについてイメージを持つことです。
自分がどんなキャリアを歩んでいきたいか、そしてその過程でどんな経験を積むことを考えているのか、想像します。 自分にどんな経験が必要なのかをイメージしておくことで、自分が理想とするキャリアを歩めているか、理想と現実のギャップから次に必要なアクションを確認できたりします。 理想とするキャリアと照らし合わせたとき、今の会社で配置転換が必要だと感じれば、人事に打診することができます。 また、今いる会社では必要な経験ができないのであれば必要なスキル・経験のために転職を検討するのも良いのかもしれません。
大事なことは、自分がどんなキャリアを進んでいくのか、具体的にイメージできていることだと思っています。
- 今まで積んで来た経験〇〇
- 何年後にはXXの仕事をしていたい
- そのためにこういう経験・スキルが必要で、現在は△△ができていない
みたいな形で具体的にイメージすることが、キャリアを考えるスタートになりそうです。
スカウト採用/リファラル採用
キャリアを歩む上で、今自分がこれから必要な経験やスキルが、必ずしも今の職務内容と合致しているわけではありません。 自分のキャリアの上で必要だと思うタイミングで、そのスキルや経験が得られるように自ら働きかける必要がこれまで以上に出てくることが考えられます。
社内で配置転換を行うことができるなら、それを打診するのは一つの方法かもしれません。 正直会社の状況や制度に依存する部分もありますが、これが実現できるのであれば短期間で次に必要なスキル経験のために動くことが可能になります。
ただ、必ずしも社内で求めるキャリアを実現できるとは限りません。 そういった場合には、転職や副業によってスキル・経験を獲得していく必要が出てきそうです。 ここでポイントになるのは、この獲得する経験を切り替える際の切り替えコストです。 これが小さければ小さいほど、自分の望むキャリアを最短経路で積んでいくことができるからです。
ここで、この切替にかかるコストについて考えてみます。 基本的に、転職する際のパターンはこの4種類です。
- 自由応募
- 企業のHPのキャリア募集のページから応募したり、転職サイト経由で応募する
- 紹介会社を経由する
- 「〇〇エージェント」といった、転職先を厳選してくれるサービスを利用する
- リファラル採用
- 知り合いを通じて選考に進む
- スカウト
- 企業の人事等が転職サイトなどを通じて気に入った候補者にスカウトを送る
細かく分類するともっとあるはずですが、だいたいこれで網羅できてるかと思います。
自由応募や紹介会社を経由する方法も大企業を始めとして広く利用されていますが、キャリアの切り替え効率という観点で注目すべきはリファラル採用とスカウトでしょう。
リファラル採用は、社員が実際に候補者の人柄を事前に知っていて、それを踏まえて選考に進みます。 つまり、自分が望む経験・スキルに合致しているかを確認でき、会社側としても社員がある程度知っている人物ということで安心して採用することができ、採用においてスキルや考え方等についてミスマッチが発生しにくいです。 IT系の会社や大企業などでも最近は導入されていると聞きますし、これから更に注目されていく方法になると思います。
また、スカウトは企業の担当者が自分の目で候補者の経歴などを確認して送信するため、自社で求める人物像に近い人材に直接アプローチできる点がメリットです。 企業担当者が得られる候補者の情報にも限界があるので完璧ではありませんが、それでも自己紹介やスキルを見て会社にマッチするかどうか判断されてから送信されるので、候補者にとっては少なくない期待値で声をかけてもらえるメリットがあります。 受け取ったスカウトの中から、自分が望む経験・スキルにあった募集があれば、スカウト経由で選考に進むのは非常に効率が良いと考えられます。
もちろん、自由応募やエージェント経由のほうが都合が良い場合も多くあると思います。 多くの企業ではすべての方法で採用を行っていますし、自分にあった方法と取るのが最も効率的ではありますが、中でも効率的だと考えられるのはスカウトとリファラルだと言えそうです。
個人の活躍を外に発信する
自分の求めるスカウトを受け取ったりリファラルを活用するのは、ある日突然やろうと思ってできるものではありません。 スカウトなら、自分のことを会社に見つけてもらわなければなりませんし、リファラル採用なら会社の中の人に自分を売り込まなければなりません。 特に意識せず、会社のスカウトの目に触れたり、いきたい会社の中の人と知り合いになるケースもありますが、そうでない人も多く、そういった方は自分を外に売り込んでいくことが、効率的に転職などをもし行うのであれば必要でしょう。
これを実現するには、理想的には自分の活躍やスキルを外に発信したいところです。 資格を頑張って取るとか、そんなに難しく考える必要はないと思います。 定期的に自分のスキルや経験について他人に読んでわかるようにまとめておいて、スカウト受信型の転職サービスやSNSで頑張ったことを公開するだけでも、外から見て自分がどんなスキルや経験を持った人なのかがわかるようになります。
このように、自分の能力や経験を外から見えるようにしておけば、運が良ければ希望する会社の中の人と知り合いになれたときにより印象に残るかもしれません。
キャリア形成のために良さそうと思えたこと
私が考えるキャリア形成のモデルケースについて確認したので、今度はこれを実現するためのアクションについて考えてみます。
キャリアプランを整理する
まずは自身のキャリアプランは整理したら良いと思います。 自分が将来どういったキャリアを描いているのかを自分で把握するだけでも、自分の仕事へ取り組む姿勢は変わるものです。
転職する/しないに関係なく、
- 将来自分がどうしたいか
- これまでの培ってきたスキル・経験はどんなものがあるか
- それらを踏まえて今何をすべきと思っているか
について洗い出しておいたら良いと思います。
自分がこれからどんな経験が必要かを明確にしておけば、例えば社内でのジョブローテーションの際に自分の希望を言いやすくなりますし、不足している経験やスキルを知った上で業務に取り組むことで日々の業務に対する向き合い方も変わるかもしれません。
自分のキャリアプランがわからなくなったら、キャリアコンサルタントに相談するでもいいし、自分と同じ志向を持った人のキャリアプランを参考にしても良いかもしれません。 ライフステージによって考え方も変わるので、定期的に更新して行く必要がありそうです。
ロールモデルを見つける
自分の具体的なキャリアプランを描くためにも、ロールモデルを見つけることはより重要になるかもしれません。
これまで、ロールモデルは同じ会社の人だったり、身近な人だったりしました。 ただ、会社に縛られないキャリアを考えると、今の同じ会社の人は将来ずっと同じ会社にいるとは限りません。 場合によっては別の会社に自分の理想とするロールモデルの人がいるかも知れません。
また、ライフステージによってロールモデルも変わるでしょうから、その時その時でロールモデルは変わるかもしれません。 適切なロールモデルを見つけられれば、自分のキャリアはより具体的に描けるようになるかもしれません。
自分の能力・実績を自慢する
これからは、自分が頑張ったこと・自分が持っているスキルは社内外問わず、自慢していくことが求められるかもしれません。
日本人は控えめな性格を持っていることが多いですが、それでは誰も自分のことを評価してくれません。 これから、自分のキャリアに責任を持つ風潮が強くなっていけば、自分の能力を第三者に認めてもらって、キャリアの次のステップへ進むための努力が必要になりそうです。 そのためにも、自分には何ができて、どんな成果を残したのを他人に自慢していくことが重要になってきそうです。
そうやって、自分のことを発信していくうちに、他者から見て自分にタグがつくようになるんだと思ってます。
- 「あの人はマネジメントの経験がある人だ」
- 「この人はBtoB営業が得意な人だ」
社内の人であれば、こんなイメージを元にキャリア上の希望を叶えてくれるかもしれません。 社外の人であれば、こんなイメージを元にスカウトを送ってくれるかもしれません。 大事なのは、他者から自分に対してタグをつけてもらうことだと思ってます。
未来に向けた人的ネットワークを広げる
スカウトやリファラル採用が最も効率的な採用の方法だと仮定して進めたとき、人的ネットワークを広げること自体がより大きな価値になるかもしれません。
まず、採用される側としては、自分が行きたいと思った会社が見つかったとき、その会社の中の人と知り合いであればその人経由で選考フローに乗れるかもしれません。 このとき、採用担当者からはただの候補者ではなく「社員の〇〇さんの知り合いの候補者」になって、ちょっとだけ良いバイアスがかかって選考フローに乗れるかもしれません。 そうじゃなくても、「会社について、実際のところどうなの?」って質問したりすることができるかもしれませんし、メリットは多いと思います。
採用する側としてもメリットがあります。 業界で顔が広いということは、上記のような打診がしやすくなります。 基本的に、人材業界ではダイレクトマーケティングできるならそれが最もコストが小さく済みます。 そのため、リファラルで採用に貢献できるくらいネットワークが広い人は、それだけで人材価値として高いと言えそうです。
ちょっとむずかしいなと思ったこと
キャリア形成のモデルについては、上でモデルケースを書いてみました。 ただ、同時に難しそうだと思う点もいくつかあります。
そうは言ってもキャリアの棚卸しは難しい
上のモデルでは自分のスキルや経験を、他人から見てわかる形に分解して、それを外にわかる形にしていく必要があります。
これは簡単なようで実は難しくて、自分の頑張ったことが他人に伝わるようにするのは意外と難しいものです。 自分では大したことやってないように思えたことでも、それが他人から見たらものすごい希少価値の高い経験であることもあります。 また、一つ一つはありきたりな経験であっても、組み合わせてみるとなかなか該当する人材がいないといったケースもあります。
客観的に自分の状況を表現するというはとても難しいことですが、今後はその能力が重要になってくるのかもしれません。
ロールモデルは簡単には見つからない
人々のキャリアがより多様化していくと、キャリアパスはより幅広くなっていきそうです。 自分の理想とする、ロールモデルはより見つかりにくくなりそうです。
これまでは、自分の身の回りの人が自分と似た境遇にいる可能性が高かったので、身近な人からロールモデルを見つけやすかったです。 それが、これからはキャリアの多様化により、対象範囲が身近だけではなくなります。 そうなったとき、自分の等身大のキャリアのモデルを見つけるのは苦労しそうです。
なかなかドンピシャなロールモデルを見つけるのは大変です。 そうなってくると、社内外様々な人のキャリアを、部分的に参考にしながら自分のキャリアプランに反映していくような世界になっていくんだろうなと想像しています。
参考文献
この記事を書くにあたり下記の文献を参考にしました。
感想
この本自体、非常に整理された内容となっていて、非常に読みやすかったです。 今転職を考えている方は、一度読んでみてはいかがでしょうか?
また、今は転職を考えていない方、もっと言えば、これから社会人になろうとしている学生の方にもおすすめします。 正直、このキャリア論を信じるか信じないかは個々人の考え方次第な部分もありますし、業界的にこれが当てはまらないといったこともあるかと思います。 それでも、キャリアを自分で考えてそれを実現していくのがこれからの流れになると思われますし、就職・転職活動を始めるにあたっての「キャリアの棚卸し」の前に、"キャリア形成"をどうやっていったらよいか知ってみるのも面白いと思いました。
以上、いろいろ考えてみたメモでした。