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ミドルマネージャークラスのマネジメントについて学ぶ

昨年から引き続き、あまり得意ではないマネジメントの勉強をしてます。 今回勉強の題材にしたのはこちら。

いろいろ考え方とか勉強していきたいと思います。

tl; dr;

  • マネージャーのアウトプットは監督下にあるグループ、あるいは影響下にあるグループが遂行した成果
  • 生産性に対するテコの効果が大きいタスクを見極めることで生産性を高める
    • 組織の目標に基づいたインディケータで生産性を監視することでテコ要素を見極め
    • 人が25%以上の時間を、臨時に開かれる使命中心ミーティングで使用していたら危険サイン
      • それ以外は情報伝達の効率化を心がける
    • 意思決定はときにはコンセンサスを取らずアウトプットを出す必要があり、一つの枠組みを示す
    • インディケーターを適切に設定し、それをきちんと活用して計画に反映していく
  • 人の生産性にフォーカスすると、単にそれができないのか、やろうとしないかを見極める
    • 単にそれができないのであれば、それをできるように教育する
    • やろうとしないのであれば、やりたくなるようにする

マネージャーにとってのアウトプットとは?

まず、マネージャーは何を目標にすべきでしょうか?

はっきり言ってマネージャーの業務内容は多岐に渡りますし、通常業務の他に人材育成、人事評価、採用活動なども含まれます。 それらをこなしていると、仕事の目的関数を見失いがちです。

マネージャーにとってのアウトプットは本書ではこのように説明されています。

だが、今ここで明確にしておくべき大事な点は、マネジャーのアウトプットとは、監督下にあるグループ、あるいは影響下にあるグループが遂行した成果だということである。 HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント

ということで、マネージャーの評価は監督下にあるグループ、あるいは影響下にあるグループが遂行した成果で測定されるべきで、これを最大化することがマネージャーの使命ということになりますね。

チームの生産性を上げるための"テコの原理"を起こす

上でマネージャーの仕事の使命は監督下にあるグループ、あるいは影響下にあるグループが遂行した成果を最大化することだとしました。 これを達成するには、チームの生産性を上げることが求められます。

生産性は簡単に考えると


生産性 = \frac{生み出した付加価値}{投下した労働}

と言えます。 左辺を大きくしたいので、

  1. 同じ労働の投下量で生み出す付加価値を大きくする
  2. 同じ付加価値を小さな労働力で達成する

のどちらかが、取りうる方法になります。 上記のどちらも実際に行われており、グラデーションで行われているのが実際かと思います。

"マネジメント"に文脈だと、プロダクトマネジメントのように価値を最も高いプロダクトを見つけ出す活動もありますし、社員の業務環境を整備して一人当たりの作業効率を上げる活動も行われます。

ポイントは、マネージャーの活動の影響範囲が大きいということです。 これは、時間的なテコ(このさき長期間発生するタスクを効率化すること)や人数的なテコ(一度で大量の人間の生産性を効率化する)の観点で、規模を考慮する必要があります。 この規模が大きければ大きいほど、マネージャーの活動が組織全体の生産性を大きく影響を与え、テコの原理が働きやすくなります。

また、テコ要素はマイナスにも働きます。 目的のない会議など、軽率な行動のせいで広範な範囲に対してマイナス作用が発生してしまうことがあるので、この辺にも注意が必要です。

生産性に対するテコの効果が大きいものを見極めるようとしても、実際の業務では複数のタスクが並列で走っていることがよくあります。 そのため、クリティカルパスの非効率性が全体に大きく影響を与えてしまうことが発生します。 この辺をうまく見極めてタスクスケジューリングを行っていくことも、テコ要素と言えそうですね。

何にせよ、生産性に対するテコの効果が大きいものを見極めることが、マネージャーの腕の見せどころと言えそうです。 このテコ要素は、大きく

  • 業務に関する最適化
  • コミュニケーションに関する最適化
  • 個人に関する最適化

のように分類できそうです。

業務に対する最適化

検査:インディケータを活用する

生産性に対するテコの効果が大きいものを見極めることがマネージャーにとってのポイントということはわかりました。 それでは、どうやってテコ要素が大きいか判断したら良いでしょう?マネージャーの勘とか、21世紀のこの時代には必要ないです。 業務上発生する数字・ログなどのインディケータをきちんと管理し、その変動を観察し、妥当性のある未来を予測し、テコ要素を見積もれば良いんです。

インディケータは、製造業なら売上や在庫、社員の出勤状況や日々の生産量などがあると思います。 アジャイルで考えればストーリー・チケットの消化速度や、リリース頻度、テストのカバレッジ、ユーザーの使用状況など、使えるものは様々です。

注意すべきポイントは、インディケータは必ず組織の目標に基づいて設定される必要があるということです。 自転車に乗るのと同じで、人間は気づかないうちに見ている方向に軌道を修正しようとします。 そのため、ストーリー・チケットの消化率を注意深く監視すると、組織はなるべく安定してチケットを消化しようとします。 それが組織の目標なら構いませんが、組織の目標が価値が高いプロダクトを作ることなどであった場合には、機能不全を起こす可能性があります。

なにはともあれ、アジャイル的に軌道を修正し続ける組織であれば、絶えず自分たちのステータスを測定できる状態を作ることが、マネージャーの仕事の第一歩と言えそうです。

打ち合わせ:情報の収集と再分配を効率化

マネージャーの仕事は情報伝達、情報収集で、それらが効果を生むのは会議です。 しかし、ミーティングは一般にあまり良く思われていません。

本書によれば、

ピーター・ドラッガーはかつて、マネージャーがその時間の25パーセント以上をミーティングに使っているならばそれは、組織不全の兆候であるとすら言っている。 HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント

だそうです。ただ、若干本書での意見は違い、

組織不全の真の兆候は、人が25パーセント以上の時間を、臨時に開かれる使命中心ミーティングで過ごすときに現れる HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント

だそうです。

別に会議自体は悪いものではなく、むしろ近代までに考え抜かれた意思疎通を効率化するための手法と言えます。 特に、情報を収集し、それを整理して、適材適所に向けて再分配することが業務の一つになるマネージャーにとって、会議は主な業務の一つだと言えます。

ここでポイントになるのは、会議には"使命中心”と"プロセス中心"の2種類ある点です。 使命中心の会議には、議長がアジェンダに沿って議事を進行する、いわゆるマネージャーが本来やらなければならない情報処理のプロセスをまとめて効率的に行うものです。 これには、スタッフミーティングのような情報共有会から、1on1まで種類はあれど、情報を収集してそれを整理して再分配するプロセスを効率化するという点においては共通しています。 これらのミーティングに共通することは、会議の目的を示し、効率良くさばくことがマネージャーに求められることです。

やっかいなのは、使命中心のミーティングで、こちらははっきり言って健全な状態の組織であれば発生しえません。 突然意思決定が必要な状況が発生するということは、相当状況が悪いことを意味します。 そうしたことが発生しないように定例会議などのタイミングで、なるべく価値が低い状態で意思決定をさばくことがあるべき状態と言えます。 そのため、突発的かつ重大な意思決定が頻繁に発生している状態は、機能不全の兆候でありこうならないようにしていくことが求められます。

意思決定:正しさとスピードのトレードオフ

意思決定では情報の非対称性と決定権について考える必要があります。 組織において、意思決定を行う人間が最も情報を持っている状況が最も望ましいですが、一般的にはそんなことはありません。 意思決定をマネージャーが行う場合であっても、マネージャーが持っている知識よりも先端の知識をメンバーが有していることはありますし、特定の分野について”痛い目”に合ったことがある経験を部下の方が持っていることがあります。 こうした、本来であれば意思決定者が持っていなければならない情報をマネージャーが持っていない状況を事前に認識する必要があります

とはいうものの、組織を運営するにあたり、意思決定は常につきまとい、その中で正しい判断を下すことがマネージャーには求められます。 このような状況下では、意思決定の場での知識の不足を事前に補うために、自由討議を実施することが行われます。 この議論では様々な力(同調圧力、権力、恐怖、など)が働き、それらは健全な"客観的な"情報共有を阻害します。 こうしたことを意識して、自由討議を運営する必要があります。

また、どこまで言っても意見が収束しないことも起こりえます。 民主主義の考え方をそのまま適用するわけにもいかない場合が多く、なかなか意思決定ができないこともあります。 このようなコンセンサスを取れていない場合でも、マネージャーは意思決定を行う必要があります。 このようなとき、意思決定をどうやっていいかわからないときんのガイドラインとしては、こんな感じになっています。

  • どのような意志決定をする必要があるのか?
  • それはいつ決めなければならないか?
  • 誰が決めるのか?
  • 意思決定をする前に相談する必要があるのは誰か?
  • その意思決定を承認あるいは避妊するのは誰か?
  • その意思決定を知らせる必要がある人は誰か?

上記を一つずつはっきりさせ、ときにはコンセンサスを取らずアウトプットを出す必要があります

計画:やって終わりにしない

計画を作るのはマネージャーの仕事の場合が多いと思います。 そのため、計画は高尚なものと思われますが、当然マネージャーも計画を間違えますし、計画通りに進まないことがほとんどでしょう。 特に今どきのIT関係の世界では、常にフィードバックを受け入れて軌道を修正していくことが求められます。

そのため、計画は一度作ったら終わりではなく、絶えず状況を記録し、予測と実績の差分を確認し、次に取りうるアクションを検討し、計画を更新し続けなければいけません。

まあ、このへんはマネージャー云々より、アジャイルの考え方ができていれば当たり前っちゃ当たり前かと思います。 ここでもポイントは、インディケーターを適切に設定・活用することでしょう。 ここまで見ていくと、マネージャーにとって一つ大きな仕事というとインディケーターを適切に設定し、それをきちんと活用して計画に反映していくことな気がします。

個人に関する最適化

まずは、本書の言葉を引用します。

人が仕事をしていないとき、その理由は2つしかない。単にそれができないのか、やろうとしないかのいずれかである。つまり、能力がないか、意欲がないかのいずれかである。 HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント

これは本当にそのとおりだと思います。 ということは、マネージャーの仕事はこれだけです。

  • まずは単にそれができないのか、やろうとしないかを見極める
  • 単にそれができないのであれば、それをできるように教育する
  • やろうとしないのであれば、やりたくなるようにする

教育に答えはないです。 これは、その人の業務に対する習熟度に応じて適切な教育も変わり、更に業務が変われば習熟度の考え方も変わるからです。 これは、常に最適な教育を模索する必要があり、インディケータを見つけ、状態を測定し、適切な教育方法を探り、効率の変化を見る。 こうした観察を続けていく必要がある息の長い問題です。

絶対にやってはいけないことは、教育することを放棄することです。間違いなく、部下の教育はマネージャーの仕事です。 どんな事情であれ、部下を教育・管理(マネジメント)するのは上司の仕事であり、その教育を(社内外問わず)顧客に押し付けることは、絶対に許されません。 そのため、「放任主義」「顧客に怒られて一人前」といった考え方は、マネジメントとは言えないので注意しないといけません。

モチベーション等については1on1やその他モチベーション理論もありますのでそちらも確認したほうが良いと思います。

www.nogawanogawa.work

部下のやる気を出す方法というか、やる気スイッチを押すところについては、もうちょっと勉強する必要がありそうです。

感想

読んでて気がついたんですが、この本めちゃめちゃ昔から読まれている本なんですね。 日本語訳されたのが最近だったので全然気が付きませんでした。

内容としては納得する部分も多かったです。 どうしてもマネージャーの生産性は把握しにくいものです。 でもやはり、自分の部下の生産性を最大化して、チームのアウトプットに責任を持つというのは、今も昔も変わらないようですね。

どうしても「自分の仕事だけやればいい」と、全体の生産性を考えないようになってしまいがちです。 こういった組織の成果にきちんとコミットするマネージャーの下で働いてみたいものです。 まあ、ないものねだりは置いといて、今回勉強したことを来週から活かしていこうと思いました。