どこにでもいるSEの備忘録

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【読んでみた】生産性

この前「採用基準」を読んでいました。

nogawanogawa.hatenablog.com

今回は「採用基準」著者である伊賀泰代さんのこちらの本を読んでみたのでその感想です。

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

日本労働社会が抱える「ワークライフバランス」の問題点

最近では、日本の人口の減少の問題が取り沙汰されています。 50年後、日本の人口は4667万人減少するなんて話もあります。 さらに少子高齢化時代で、労働人口という観点では更に人口減少の影響は大きいかもしれません。

今と同程度、あるいはそれ以上の生活水準を手に入れたいと思うのに、そのために必要な労働人口はどんどん減って行くと予想されています。 さらに悪いことに、高齢者人口が急増するため、医療・介護に対する需要は増える一方です。

働き方改革による生産性向上の必要性

  日本の人口は急速に減少すると予想されており、生活の質を維持するためには、リタイアした人たちの分まで残された労働者が業務をこなす必要があります。 日本では製造現場の業務効率化は積極的に取り組まれていると言います。 一方で、オフィス等で働く「ホワイトカラー」の生産性が欧米に比べて低いと本書では問題視しています。

昨今、働き方改革を積極的に押し出すことで、生産性改善に取り組んでいるように見えます。 しかし実際にはこの取り組みは、不足した労働力をかき集めているだけです。 そして、人口減少による労働力の減少に対して、この取り組みによる労働力の増加は小さすぎます。

また、多様な働き方が許容される事で、制度を利用していない労働者にしわ寄せが来て、生産性の向上はますます必要になると言います。 このように、日本では「生産性の向上」が緊急の課題であると本書では問題定義しています。

「生産性」の定義

生産性 = 得られた成果 / 投入した資源

生産性の定義について本書で記載されている表現を拝借すると、 

productivety = \frac{get\ value}{invested\ resource} =  \frac{output}{input}

です。そのため、生産性が高いということは、投入した資源に対して成果が大きい「コスパが良い」状態だと言えます。

人材育成における「成長」とは「生産性の向上」

昨今の就職活動の現場で頻繁に耳にする「成長したい」の言葉。 こちらの意味するところは、「自身の生産性を高めたい」ということになりそうです。

受験者側が考える「成長」と、企業側が考える「成長」は若干ニュアンスが違うようにも思いますが、 少なくとも企業側は「成長 = 得られた成果 / 投入した資源」と考えて間違いないでしょう。

だからこそ、大企業では同じ労働力から生み出される成果を大きくするために研修等を実施するわけです。 そのため、企業側の視点では人材育成において、「成長」とは「 生産性の向上」なのです。

生産性を向上させるためには

生産性を向上させるには、大きく分けて2つの方法があると本書では指摘しています。

  • 得られた成果を大きくする(アウトプット)
  • 投入した資源を小さくする(インプット)

また、上記の方法を実現するために手段は2つあるといいます。

そのため、生産性を向上させるためには、方法(2通り)×手段(2通り)= 4通りのやり方があると言います。

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生産性を向上するために、上図でいう下段の領域への取り組みが行われることが多いと思います。 インプットの削減に対しては積極的にイノベーションが起こっているのでは無いでしょうか。 しかし、この2つはインプットをゼロにできない以上、努力に限界があります。

改善によるアウトプットの拡大(上段の左の領域)についても近年だんだん行われるようになってきていると感じます。 高級路線に方向転換した商品が近年多く見られるのはこの表れだと思います。

日本が最も苦手としているのは、イノベーションによるアウトプットの拡大(上段の右の領域)だと思います。 今までできなかった仕組み・商品を社会に送り出すことが必要になり、これを実現するには様々なコストがかかり、非常に大きなコストがかかります。

生産性とイノベーションは両立しない?

イノベーションと生産性の向上は両立しない」 と考える方も多いのではないでしょうか。 本書を読むとその考え方は半分正解で半分間違いであることがわかります。

イノベーションを起こすためには確かに多大な努力が必要になることが多いです。 しかし、世の中の課題を解決しようとするビジネスイノベーションは、科学技術研究の場からは生まれにくいものです。 ビジネスイノベーションには、社会の課題を認識し、それを解決しようとする意思と努力が必要になります。 世の中の課題をクリアに認識できる社員が必要になり、それを解決できる立場にいる人間だからこそ、ビジネスイノベーションは実現できるのです。 一方で、利益度外視でイノベーションを起こそうとすれば、利益を出して会社を存続させるという至上命題に反します。

そのための余力を捻出するために、生産性が必要となります。 生産性を向上させることで捻出された余力を、イノベーションを起こす努力に当てることがビジネスイノベーションに必要だと考えられます。 そして実現されたビジネスイノベーションによって、アウトプットの拡大が起こり、結果として生産性が向上するサイクルができあがります。

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考え方のイノベーション

イノベーションは必ずしも自由な発想の下に実現されるわけではなく、とくにビジネスイノベーションは世の中の課題意識から実現されます。 人間の思考は、制限が設けられるとそれをバネにして、今とは異なる次元に入っていくことができると言います。

実現できるかギリギリの目標を掲げ、改善だけでは目標を達成できないように追い込むことで、 イノベーションが起こることを促進させることができると考えられます。 改善だけでは達成不可能なのでビジネス全体を抜本的に見直す必要があり、結果としてイノベーションが起こるという流れです。

言われてみれば確かにそうかもと感じました。 ビジネスイノベーションを引き起こすのは、社会の課題の当事者である会社の社員です。 自由な発想からではなく、制限された中で厳しい目標を達成しようとする努力からビジネスイノベーションが起こるのもうなずけます。

感想

日本人が欧米と大きく異るのは、リーダーシップと生産性だと本書では指摘しています。 AIやドローン等を積極活用することで将来多くの仕事がなくなるなど騒がれています。 本当に怖いのは仕事がなくなることではなく、今の仕事を強引に続けようとした結果、 高齢化社会に押しつぶされて生活の質が下がることだと思いました。

AIやドローンに仕事を代替させ、人間が真にやらなければならない付加価値の高い仕事に注力することが、 今後の日本社会には必要なのかもしれませんね。