前にこんなものを読んでいました。
その兼ね合いで、今回はこんなものを読んでいました。

- 作者: 落合陽一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/01/31
- メディア: 単行本
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なにかと勉強になったので、思うところについてのメモです。
日本はこうあるべき論
テクノロジーとの関わり方
全体としては、日本は今後どうなっていくべきなのかという話です。 読んでみたところの個人的な理解としては下のような感じです。
人間はコンピュータを始めとするテクノロジーともっと密接に関わるようになるんでしょう。 今でも生活はテクノロジーに支えられているのですが、もっと近づいていく、あるいは、新しいテクノロジーが生活に取り込まれていくでしょう。
こうなっていく根拠は、間違いなく高齢化社会になることです。 高齢化社会になるにつれて、日本は労働人口が急速に減少していきます。 現在の日本の低い労働生産性を考えると、日本は「生産性をいかにして高めていくか」という部分に注力していくようになるでしょう。 (現に、働き方改革とか叫ばれていますし)
そうなると、人間は付加価値の小さい仕事をコンピュータにアウトソーシングしていくようになり、これまで以上にコンピュータに頼る部分が大きくなり、結果としてコンピュータがもっと身近になる必要性が強まります。
都市部と地方
視点が変わって、社会状況としてはこんな感じでしょうか。
願望も入った理解になっていますが、都市集中型から地方分散型の体型に変わっていってほしいものです。 これは、都市部に人や企業が集中するメリットがだんだん成立しなくなってくると予想されるためです。
テクノロジーによって、コミュニケーションは多様化し、物理的距離がコミュニケーションの障壁になることは徐々に下がってきています。 コミュニケーションを始めとするその他の利便性が地方と都市部で変わらなくなったとき、次に検討するのはランニングコストになるでしょう。 そうなったときに、都市部は一転して分が悪く、地方に優位性があります。 コミュニケーションに対する物理的障壁が下がったとき、都市でしかできない仕事は少なくなっていき、地方に会社を構えるほうがコストが抑えられる構造になっていくはずです。
そうやってバランスした先には、地方分散型の社会になっていくんだろうなと思っています。
テクノロジー
「日本が今後こうなっていくべき」ということを考えていく際に、キーテクノロジーとなるものが登場し始めています。 自動翻訳や自動運転など、近い将来期待されている技術はたくさんあります。 技術自体の課題は残っていますが、それを使って世の中をどうデザインしていくかも非常に重要になります。
中でも興味深いと感じたのは、仮想通貨とホログラフィックの2つです。
仮想通貨
ブロックチェーンについては過去にも本を読んだことがあります。
このときはあんまりグッと来なかったんですが、仮想通貨をどんどん発行していくことが重要になると感じました。
これまでだと、商品を効率的に市民に提供するためには、なるべく人と企業を一箇所に集中させることで、モノと人の移動を局所化し効率化していました。 しかし、次の節でも書きますが、テクノロジーが進んでいくにつれて、人間はどこにいても平等にあらゆるリソースにアクセスできる様になっていくでしょう。 コミュニケーションの障壁が下がっていくと、地方は仕事を都市から地方に誘致するチャンスが出てきます。 地方の過疎化が進行している状況に対して、現在ではその地域の税金と国からの交付金と地域の税金だけで自治体は地方活性化するような構造になっています。
そこでポイントになるのが、仮想通貨技術だと思います。 仮想通貨技術のメリットは、低コストで民主的に通貨をデザイン・発行できるという点です。 また、紙幣とは異なり、仮想通貨は誰でも発行することが可能で価値の裏付けがありません。 (日本円であれば税金の支払いが可能という点で価値の裏付けをとっています。)
実紙幣と仮想通貨との間の価値が変動するため、紙幣というより証券に近い存在と言えるでしょう。 ただ、仮想通貨はその用途についてのデザインの自由度が高く、仮想通貨を保有するメリットをデザインできるようになります。 特定の企業や個人にとっては実紙幣より価値の高い仮想通貨をデザインすることが可能になるわけで、メリットを感じた人は仮想通貨を実紙幣で購入します。 仮想通貨でしか買えない商品を製造する、あるいは特定の条件下で実紙幣より特になる仮想通貨を送り出せば、仮想通貨を使用した経済構造が成立します。 その中で、仮想通貨は証券やクラウドファンディングのような存在となります。
こうしたことを自治体や地域企業が主体となってでデザインできる点がポイントです。 地域の特性や、目指すべき方向性を自治体が定め、その地域にあった企業が活躍しやすいように通貨をデザインできるのです。 そうやって、地域ごとに自立した自治を許容することで、企業を誘致し地方を活性化させることができます。
おそらくこのような取り組みは、フットワークが鈍くなりがちな大企業よりこれから現れてくるベンチャー企業のほうが効果が大きく現れてくるでしょう。 人や企業にどんなメリットがあるかをロジカルにアピールできれば、ベンチャーや中小企業を地域に誘致し、それらを巻き込んで地域活性化しいくことができる可能性を持っています。
今でも実際に仮想通貨を地域企業主導で発行するケースが出現し始めています。
今後は地域の特色にあった仮想通貨をデザインすることが課題になっていくと思います。
ホログラフィー
ホログラフィックが興味深いと感じた理由は、人間のコミュニケーションは視覚(と聴覚)から得る情報が非常に大きいため、これがリアリティを持つと人間はリアルとデジタルの見分けがつかなくなるためです。
人間はどうしても対面でのコミュニケーションが相互理解のために必要になってくる場面があります。 しかし、実際には人間はコミュニケーションの際に視覚と聴覚から得られる情報だけでコミュニケーションを成立させています。 裏を返すと、視覚と聴覚を騙しきるほどの高解像度な信号さえ作れれば、人間はコミュニケーションがリアルなのかデジタルなのかの区別がつかなくなります。
現在でも近い技術は出てきていて、ホログラフィーを活用したデバイスはどんどん出てくるのではないでしょうか。
視覚についてホログラフィーによる表現が可能になった先には、あたかもそこに会話の相手がいるかのように錯覚するため、リアルのコミュニケーションの重要性が激減する可能性があります。 リアルなコミュニケーションの重要度が低減されれば、都市部に人を集めてコミュニケーションをする必要性がなくなり、物価の安い地方に企業が流れていくことが可能になります。
その他 〜コンテンツ消費からコミュニケーション消費へ(34:24)〜
これの関連で、今回はこちらを見ていました。
これまではメディアがコンテンツをデザインして、コンテンツによって消費者の購買行動を誘導する「コンテンツ消費」が一般的でした。 しかし、現在では消費行動の多様化によって大衆受けするコンテンツを制作することができなくなり、メディアがコンテンツを提供するのではなく消費者自身がコンテンツを発信する時代になっています。
今の日本のハロウィンは年間1800億円くらいの規模があるそうで、これは今の映画産業とほぼ同じ位の規模らしいです。 要は、映画館で2時間映画見ることと、渋谷や六本木で仲間と一緒に盛り上がることが同じくらいの価値と捉えることができます。
今後、消費者自身がコンテンツ制作者になる流れが進んでいった先に、生産者は消費者のコミュニケーションを設計する、いわば「コミュニケーション消費」を意識しないといけません。 この時代の生産者が考えなければいけないのは「モノを作る」のではなく「デザインするための必要なパラメータを定める」ことです。
生産者に必要なことはすぐれたものを作ることではなく、商品を世の中に送り届けることで消費者のコミュニティをどう形成するかを考えることに変わってきています。 消費者は商品に付随するパラメータを使用し、コミュニティを形成し、そこから価値を感じるようになるようです。 要は、生産者は消費者のコミュニティを、生産活動を通じてデザインすることがこれからのモノ作り・コトづくりのポイントになります。
感想
今の日本社会に求められているのって、「いいものをつくる能力」ではなくて「いいモノの周りにあるであろう社会システムやコミュニティをデザインする能力」なのかもしれないですね。 世のエンジニアはそこまで考えて提案していかないといけない段階にあるのかもしれませんね。