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【読んでみた】超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト

ゴールデンウィークってことで、まとまった時間をつかって読書してました。 最近なにかと拝見する機会が多い落合先生の、こちらの本を読んでみました。

超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト

超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト

AIを始めとするテクノロジーの進歩は我々から単純作業を奪うと言われている一方で、人間はクリエイティブな作業をすればいいと楽観的な人がいます。 しかし、今日のAIは絵を書くことも音楽を作曲することができるようになっており、日々進歩しています。 企画書などの作成も、データの量さえ揃えばそう遠くない未来にコンピュータに代替されることが容易に想像できます。

こうした、一般にクリエイティブな仕事とされる創作活動がコンピュータに代替されるようになっている現状を踏まえると、人間がするべき本当の意味でのクリエイティブな仕事はより高度なIT技術を駆使した業務になると予想されます。 そして、それらは日本よりシリコンバレーを始めとする諸外国の人々が得意とする分野でもあり、そうした人々と競争になることが予想されます。 その悲観的な未来に対して、生存戦略の考え方がまとめられています。

以下は個人的にポイントだと思うところについて、思ったことの備忘録です。

生き方

ワークアズライフ

昨今では働き方改革やらワークライフバランスなんて騒がれていますが、その考え方自体が合わなくなる未来が来るようです。

テクノロジーが進歩する以前は、多くの人は決まった時間にしか仕事ができなかったし、地球の反対側とコミュニケーションを取る必要もありませんでした。 そのため、仕事とそれ以外の時間は明確に切り離されて考えられていたし、今もその名残は強く残っています。 しかし、今では様々な形態の働き方が生まれ、今後仕事とそれ以外を切り離して考える事自体が難しくなっていきます。

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そうなると、仕事とそれ以外の境界は薄れ、働き方を見直すことは生活全てを見直すことに近づいてきます。 そうなった先にあるのは、生活の一部として仕事をどう取り込むか、ワークアズライフの考え方だと思います。

個人のブルーオーシャン戦略

働き方を見直す上で今後考慮しなければいけない観点は、「ルールとゴールが明確になった業務はコンピュータが人間を凌駕する可能性がある」ということです。 コンピュータは明確なフレームと目指すべき目的が与えられた作業は人間を遥かに越える能力を発揮でき、人間が太刀打ちできる領域では無くなっていくでしょう。

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そうなってくると、今後我々が向かうべき戦場は「競争」によるレッドオーシャンではなく、「多様性」によるブルーオーシャンだと考えられます。 個々人がそれぞれの好奇心を生かし、テクノロジーコモディティ化でカバーしきれない範囲を人間が受け持つことが、真の意味での分業となりそうです。

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こういうのを考えると、今後必要になるのは「競争心」ではなく「好奇心」なんだと思います。 社内の同僚や、同業他社と社員と争う事ができるような業務は、ものさしが明確になったコンピュータの得意分野となっていくでしょう。 好奇心に強く突き動かされたニッチな分野を攻めることで、社会的競争力が高められるとともに、好奇心によって生活が豊かになることが予想されます。

習慣が続くための3つのポイント

仕事を生活の一部として受け入れ、自分の独自の戦場で仕事をするブルーオーシャン戦略をとった先には、「遊び」という概念が重要になります。

仕事における生産性の観点を考えると、モチベーションは生産性を左右する非常に大きなファクターです。 このモチベーションを維持し生産性を高い水準で保つためには、仕事に対する「報酬」を正しく認識していくことが重要です。

本書では、報酬は以下の3つに分けられるとしています。

  • ギャンブル的な報酬
  • コレクション的な報酬
  • 心地よさの報酬

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要するに、できるかどうかわからないラインを渡り歩き、何らかの成果物を形に残し、それを通じて快楽を感じることができれば仕事を始めとする習慣はうまく継続することができるそうです。

働き方

スピード感と開発者に求められること

これまでに比べてあらゆるものづくりに対するプロセスが激変していることは明確です。

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これまで我々が何年もかけて学校で学んできたことはすでにインターネットに情報として公開され、今後はインターネットを見るだけで知識を得るようになります。 そうなった時に、望む望まないにかかわらず、これまで持っていた知識という競争優位性が崩れ去り、専門性はだれでも簡単に手に入れることができるコモディティ化していきます。

また、こうしたときにマーケティング活動にも影響が表れていきます。 f:id:nogawanogawa:20180430090340j:plain

生産開発のプロセスが大幅に短縮されている中、エンジニアはものづくりだけではなく「誰のための商品なのか?」(セグメンテーション、ターゲティング)、「なにができるようになるのか?」(プロモーション)を念頭に置いて開発しないと作ったものを売るまでに時間がかかる、あるいは売れなくなってしまいます。

知識のコモディティ化によって開発のスピードが飛躍的に向上せざるを得ないようになるだけでなく、エンジニアは製品のターゲットやプロモーションを念頭に置いた設計・デザインまで担う必要性が今後ますます求められていきます

スペシャリストとゼネラリスト

労働者の観点では、平均的に何でもこなすゼネラリストはコンピュータに代替され、生き残るためにはスペシャリストであることが大前提になってくるようです。

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特に、幅広い知識は既に検索すれば情報は取得できるため、知識量ではコンピュータには太刀打ちできません。 人間は知識に対してフックを付けることが求められ、どのようにすれば必要な情報にたどり着けるか、その特徴量を身に付けることが重要になっていくようです。 知識のフックによる情報検索はゼネラリストの最低保証ラインを引き上げ、誰しもが平等に一定水準に知識にアクセスできることを意味します。

そうした中で、我々がコンピュータに勝つには「〇〇はなにか?」というクイズ的な問いに答える能力ではなく、「〇〇するにはどうしたらよいか?」という課題解決的問いに答えられるようになる能力が必要になります。

方針を設計し、必要な情報にアクセスできる知識のフックを用意することで、コンピュータを効率的に活用でき、人間の生産性を次の段階へ進歩することができます。 そして、専門性がニッチであるほどこれはそれぞれの個人の専売特許として地位を確立でき、国際的にも競争優位性を築くことができます。

情報の優先順位

スペシャリストであリ続けるためには、自分の周辺の分野についての情報収集は欠かせません。 幸いなことに、ソーシャルメディアの登場によって誰もが情報の発信者になることができ、その情報を誰でも見聞きすることができるようになっています。

従来のマスメディアでは提供される情報はマスメディアが決め、報道されない情報はなかったものとされてきました。 それが、今ではインターネット上で検索すればニッチな情報は簡単に集めることができ、スペシャリストに必要な情報を簡単に集める事ができるようになっています。

そうしていくうちに、情報のソースにヒエラルキーがあることが見えてきます。

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いつでも情報にアクセスできるようになったからこそ、身の回り、専門性の絡む情報はより大きなインパクトを持つ情報であると言えます。 こうした情報を判別し、いかに効率よく追っていくことができるかが、情報収集のポイントになってきます。

感想

非常に納得の内容で、こうなっていくだろうなと思いました。 一つ興味があるのは、描かれているような社会に適合できなかった人はどうなるんでしょうね? そして、適合できない人ってかなりいると思います。 カオスな未来にならなければいいですが…