前にプロダクトマネジメントについて勉強してました。
その流れで、スプリント *1*2 の勉強もしてみようとこちらの本を購入しました。
SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法
- 作者:ジェイク・ナップ,ジョン・ゼラツキー,ブレイデン・コウィッツ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/04/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
こちらで勉強してみたのでそのメモです。
- tl; dr;
- スプリント is なに?
- 1日目:問題の洗い出し、フレーミング
- 2日目:とにかくアイデアを出す
- 3日目:出したアイデアの中から選ぶ
- 4日目:プロトタイプを作る
- 5日目:本物の生身の人間でそれをテストする
- その他
- 感想
tl; dr;
- 「スプリント」とは、アイデアをプロトタイプのかたちにすばやく落とし込み、それを顧客とテストすることによって、たった5日間で重要な問題に答えを出す手法
- 1日目はスプリントで解くべき最も重要な問題を定める
- ターゲットとなる登場人物は?最もポイントになる瞬間はいつ?
- 2日目はアイデアを出す
- アイデアは身の回りのものからインスピレーションを得ると楽。なるべくたくさん考えるほうがいい。
- 3日目はアイデアを決める
- アイデアを絞り、プロトタイプを作るためのストーリーを作成する
- 4日目はプロトタイプを作る
- テストで"フェードバック"ではなく"反応"を得るための品質にする。そのためにめいいっぱい”サボる”工夫をする。
- 5日目は実際にテストする
- スプリントクエスチョンを振り返って、アイデアそのものを評価する。これができてスプリント終了。
スプリント is なに?
本書の言葉をお借りすれば、スプリントはこのようなかたちで説明されています。
「スプリント」とは、GVが活用しているプロセスで、アイデアをプロトタイプのかたちにすばやく落とし込み、それを顧客とテストすることによって、たった5日間で重要な問題に答えを出す手法をいう。事業戦略やイノベーション、行動科学、デザインなどの手法の「ベストヒット」集を、どんなチームにでも活用できる段階的プロセスにパッケージしたものだ。 SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法
スプリントが必要になる背景
昨今、イノベーションを起こそうとしてプロダクトを作ってみて、なかなかうまく行かないという方々も多いのではないでしょうか? どのようなプロダクトであれ、それを使う人がいて、その人が価値を感じ、その人が自ら行動を変化させると言う点については共通なのではないでしょうか?
プロダクトを一つ作り上げるのには、非常に多くの時間とお金と労力がかかります。 一方、作ったはいいが、そのプロダクトが期待した結果を産まないというリスクが多かれ少なかれ伴います。 そして、これらのリスクはプロダクトの開発資金を捻出しているであろう企業の経営者にとっては、できれば排除したいものになります。
しかし、このようなプロダクト開発の価値は、基本的にはサービスなどをローンチしないとわかりません。 このプロダクトの価値の有無をできるだけ、早い段階に理解できれば、プロジェクトの方向転換はスムーズですし、うまく行きそうだとわかれば安心して投資を行うことができるはずです。*3
そのような、プロダクトが本当にうまく行くのかという不確実性をなるべく早い段階で検証することが求められるようになってきたのが、昨今デザインスプリントが注目される背景になっているのかなと思います。
スプリントの流れ
上でも書いてありますが、スプリントは5日で実施します。週末をまたぐと思考が途切れるので、できれば月〜金でやるといいそうです。 本書によれば、流れはこんな感じです。
- 月曜:問題の洗い出し、フレーミング
- 火曜:とにかくアイデアを出す
- 水曜:出したアイデアの中から一番を選ぶ
- 木曜:プロトタイプを作る
- 金曜:本物の生身の人間でそれをテストする
プロダクトマネジメントの勉強で出てきましたが、おそらくポイントは実際に作るよりコストを少なくとも1桁減らすことでしょう。 これができなければはっきり言って、意味がありません。 そのため、時間もお金もなるべくかけず、最短経路でプロダクトの価値を探索することが求められます。
準備
準備は至ってシンプルです。
- 課題を決める
- 取り扱うべき一番大事な問題を絞ります。
- チームを作る
- 7人以下
- 決定権を持つ人が必ず必要。
- 専門家は強い味方になる
- 時間と場所を確保する
- ホワイトボードのある空間
- 連続5日間
- すべてをスプリントに集中させる
- 文房具を用意
こんなもんです。ポイントは随所にありますが、そのへんは本買って読んでください。
以下、適当に気になったとこをメモしていきます。 詳しいところは本買って読んでください。(適当)
1日目:問題の洗い出し、フレーミング
1日目は5日間を通じて議論するであろうプロダクトのゴールを定めます。 真っ先に、プロダクトのゴールと、それを質問にしたスプリントクエスチョンを書き出します。
その後、問題を少しずつ詳細化していきます。
地図を作る
マップとは、顧客が製品/サービスを利用する流れを簡単に表したものだ。 SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法
これが5日間を通じて立ち返る原点になります。 マップには、開始と完了と途中の3段階のステータスがあり、一言フレーズとボックスと矢印で書かれるシンプルなものです。 一言フレーズが多すぎたら複雑過ぎるか、解こうとしている問題が大きすぎます。 常に立ち返れる程度に、シンプルに書くことがポイントです。
ターゲットを決める
マップを書いたら、それをその道の専門家に確認します。(そのためにもチームに専門家が必要)
専門家なら、マップのうち、どこが最も根本となるリスクなのかわかるはずです。 そして、マップのなかで誰のどの一言フレーズに該当するのか確認します。
最後に、それをスプリントクエスチョンと照らし合わせて、どのスプリントクエスチョンに答えることがスプリントのゴールなのかを明確にします。
2日目:とにかくアイデアを出す
アイデアは周りにあるものを頼る
2日目は、1日目に定めた問題に対する解決策のアイデアを出していきます。 無難なアイデアの外側の、ちょっとおかしなアイデアであっても出していく必要があります。 斬新なアイデアは何もないところからは生まれないそうです。 周りの、一見関係のないものを参考に、問題に対する解決策のアイデアを探っていきます。
ライトニングデモや4段階スケッチなど、楽しみながらアイデアを絞り出す工夫が紹介されています。 馬鹿にせず、一度やってみると多分いい感じに機能するかと思います。
3日目:出したアイデアの中から選ぶ
何を基準にアイデアを選ぶ?
基本的には決定権を持った人の独断で決定します(多分POやPdM)。 そこに至るまでのプロセスにはメンバー全員で議論と意志を表明します。 日本人はとくに同調圧力が強いので、特にこの手の判断を嫌う傾向があります。 ですが、時間を余計にかけないためにも、このやり方は非常に有用です。
一つに絞る必要はありません。どうしても決められないときは、プロトタイプを複数用意すればいいだけです。
ストーリーを描く
プロトタイプするものが決まったら、こんどはその周辺にあるストーリーを固めていきます。 これは、次の日のプロトタイプや最終日のテストにも影響することです。
スタートとゴールを定めます。 Webのシステムなら、どこで顧客にリーチするか、企業向けのシステムならどんな状況で使い始めるか、などスタートはあります。 ゴールは、プロダクトのゴールと整合性を取れるようにします。 スプリントクエスチョンに答えられるように設定します。 あとは、プロトタイプをつくる人から頻繁に質問が出ない程度に、スタートからゴールまでのステップを一つ一つスケッチします。 ストーリーは15分程度に収まると嬉しいです。最終日のインタビューで困るので。
4日目:プロトタイプを作る
フィードバックではなく”反応”を測定できるようにする
プロトタイプの定義にもよりますが、原則1日で作れるように工夫を凝らします。 一方で、このプロトタイプをモニターが見て、あたかも本物であるかのような錯覚を作る必要があります。 ここでペーパークラフトを使ったら、その瞬間からモニターの意識は"使う"から”フィードバック”にシフトしますが、この段階でフィードバックに価値はありません。
ということで、ちゃんと動かなくとも問題ありませんが、本物そっくりである必要があり、とにかく効率よく作る必要があります。
必要なツールや実例は本書をご参照ください。 ポイントは、とにかく効率よくそっくりなフェイクを作ることです。
5日目:本物の生身の人間でそれをテストする
やって終わりのテストにしない
プロトタイプを作ったら、あとはテストするだけです。 一番恐れるべきなのは、「テストしたけど結局どういう結論なんだっけ?」と解釈できないことです。 これを避けるために、テストから分析まで一気にやるのが良いはずです。
細かいインタビューテクニックは、ぜひ本を読んでください。 この辺は、ユーザーの本音を聞き出すために心理的なトリックも含まれるので、非常に参考になります。
ポイントは、インタビューから傾向を見つけること、そしてインタビューの結果がスプリントクエスチョンに対してどんな回答になるかを見極めることです。 複数人に対してインタビュを実施すると言っても、どうやら多すぎる必要はないようです。 せいぜい5人で十分だそうで、それ以上はコスパが良くないみたいです。
こうして、最初に決めたスプリントクエスチョンに対する答えを見極めます。 無理やり成功にする必要はありません。成功であれば、「自信を持ってプロダクト開発を進めれば良い(むしろ他社に追いつかれないように急いで開発すべき)」という判断になりますし、失敗であれば、「たった一週間でその先数ヶ月の投資を無駄にしなくて済んだ」ということになります。
部分的な成功であれば、だめな部分だけ"おかわり"のスプリントをすればいいだけです。 たかだか1週間追加したくらいで、不確実な未来をよく見通せるなら問題ないはずです。
その他
参考にさせていただいたスライド
本家
これいいですね。参考動画がたくさんついているので、本を読まなくてもある程度流れは理解できそうです。
参考の動画
感想
まず、amazonのレビューにもありますが、この本のタイトルはあまり良くないです。内容とタイトルの印象が一致してないです。 内容が素晴らしいだけに、タイトルで普通のビジネス書に間違われてしまうのは非常にもったいないと思います。
ちなみに英語版はこんなタイトルです。
"Sprint: How to Solve Big Problems and Test New Ideas in Just Five Days"
Sprint: How to Solve Big Problems and Test New Ideas in Just Five Days (English Edition)
- 作者:Jake Knapp,John Zeratsky,Braden Kowitz
- 出版社/メーカー: Simon & Schuster
- 発売日: 2016/03/08
- メディア: Kindle版
内容としては、非常に勉強になりましたし、この前のinspiredでも必読書と書いてあったので、プロダクト開発をリードする方はぜひ読んだほうが良いとは思います。 特に、具体例が幅広く紹介されているので、非常に参考になりました。