この前はリーンスタートアップについて勉強して、「学び」が非常に重要視して考えられているということを書きました。
リーンスタートアップの考え方に基づいて事業を推進していく上で難しいのが、検証だと思っています。 何かしらの施策を打ったときに、リーンスタートアップではそれが価値仮説・成長仮説を証明するかを確認する必要があります。 しかし実際には、こういった仮説を直接的に数値的に測定することは難しく、他の値から帰納的に判断するといったことが求められます。
そういった目標設定とその結果に対する目標設定について勉強すべく、こちらの本を読んでみました。
- 作者:クリスティーナ・ウォドキー
- 発売日: 2018/03/15
- メディア: Kindle版
ということで、今回は事業における効果検証あれこれに関して勉強してみたのでそのメモです。
OKRの考え方
最近では多くのスタートアップをはじめ、Googleなどの大企業も、目標設定の手法にOKRという手法を採用しているということが知られています。
OKRは"Objctive and Key Result"の略で、定性的な目標(Objective)と定量的な指標(Key Result)を明確にし、これらの達成を目指して事業を推進していく目標管理手法です。
まずは、OKRの基本的な考え方について見ていきたいと思います。
Objevtive : 何を達成したいか
OKRのObjectiveは「パフォーマンスを評価する仕組み」ではなく、「人を鼓舞し、能力を高める仕組み」です。 一般の目標管理とは違います。 そのため、ゴールは従業員を鼓舞するものでなければなりません。
目標管理というと、組織・個人レベル問わず、今でもやっている組織は多いかと思います。 そして多くの場合、目標は定量的なもの(売上、営業利益、など)になっているかもしれません。 これはこれで良いと思いますし、通常の目標管理という点では正しいと思います。
これとは違い、OKRのObjectiveは定性的に何を実現したいかを表現します。 そして、それは従業員が自主的に向かいたくなるゴールである必要があります。
そのため、組織全体がワクワクするゴールを設定しましょう。 そして、そのゴールを本当の意味で組織に浸透させましょう。 従業員が奮い立つゴールを考え、それを浸透させること、OKRにおいて最大のポイントかも知れません。
Key Result : 何を測定するか
定性的な目標であるObjectiveに対して、Objectiveを達成するための主な結果をKey Resultとして設定します。 Key Resultでは定量的に測定できる指標を3つ定めます。
Key Resultは多すぎても少なすぎてもいけません。 目指すべきゴールをなるべくフォーカスしたいからです。
なにもかも重要というのは、どれも重要でないのと同じ
真剣に優先順位を考えて、最も重要なKRを3つ定め、全力でそれを達成することだけ考えます。
ストレッチゴール
Key Resultは簡単すぎても、難しすぎてもいけません。 特に、簡単すぎるKey Resultはサンドバッグと言われ、全く意味がありません。 逆に高すぎる目標は、最初から諦めてしまい、これも効果が薄くなってしまいます。 そのため、成功する確率が5:5くらいが丁度いいです。 全力で頑張ってなんとか達成できるかどうか、ギリギリのラインをついていくのがKey Result設定のポイントです。
この場合、全力でやっても失敗する確率が50%あります。 失敗が人事評価に絡んでしまうと、人間はどうしても低い目標を設定して安全に走ってしまいがちです。 人事評価とOKRは切り離す、あるいは失敗を不問にするような仕組みに変える必要があります。 メンバーが奮い立って、目標にひた走るのを阻害しないような制度を設計する必要があります。
失敗から学ぶことは大きいですが、それでも気分の良いものではありません。 最高の結果に向かって、自分の能力以上の結果を出すためには、それなりの失敗のリスクがつきものです。 それでも、高い目標を達成したときの喜びを信じて、全力で試行錯誤するのがこの方法の本質だと言えるかもしれません。
正しいOKRのやり方
定性的な目標(Objective)と定量的な指標(Key Result)を明確にし、これらの達成を目指して事業を推進していく目標管理手法だということまでは、意外と知られています。 ただ、OKRの手法はそんなに単純ではなく、もっと多角的に目標に向かってアプローチをしていきます。
確認すべき4つのポイント
OKRは定めて終わりではありません。 継続的に目標に向かってコミットしていく運用まで含まれます。
OKRを定めただけではこの運用は完成せず、運用していく上で定めなければいけません。 運用方法としては、こちらの記事も参考にさせていただきました。
ざっくりまとめると、下記を毎週確認します。
- OKRの自信度
- サンドバッグになっていないか?
- 健康健全性
- OKRを"健全に"達成できているか
- 今週の優先事項
- 大きな(3ヶ月程度) の目標のうち、今週何するか
- 今後4週間のプロジェクト
- 中期的に何をするか
これらを確認し続けることで、
- 目標に対して間違った方向に進んでいないか(金のリンゴに惑わされていないか)
- 健全にOKRが機能しているか
を確認し、脱線を防ぎます。
ゴールを設定しておいて無視するのは、失敗の簡単なレシピ
OKRの大きなポイントは、目標を立てっぱなしにしないことです。 企業の目標管理制度と大きく違う点はこの点かと思います。
必ずOKRは短いサイクルで継続的に確認するようにします。 これは、人は気づかないうちにあらぬ方向に進んでしまうからです。 ただでさえ、正解がわからない新規事業では、誤った方向に進みがちです。 信じた目標に向かって、最短経路を歩み続けていることを常に確認しなければ、すぐに迷宮に迷い込んでしまいます。
重要なことはめったに緊急でなく、緊急なことはめったに重要でない
時間管理のマトリクスについて聞いたことがある方もいるかも知れません。
重要度と緊急度でタスクを4象限に区切る考え方です。 このマトリクスで考えるときの、「重要だが緊急でない」タスクを行う予定を必ずいれましょう。
重要なことはめったに緊急でなく、緊急なことはめったに重要でない
人は目の前の緊急なタスクに追われて、大事な物を見失いがちです。 本当に重要なタスクは、必ずしも緊急ではないことが多いです。 しかし、目標達成には非常に大きな役割を果たします。
重要なことに取り組む時間を作るようにすることがポイントです。
金曜日のwin session
OKRは毎週確認し合うということを書きました。 月曜日に上で紹介した4つのポイントを確認しあったら、金曜日にはその成果を見せ会う場を設けましょう。
ストレッチゴールは達成することが困難です。 だからこそ、それを達成できた人は称賛されなければいけません。 失敗しても、難しいんだから仕方ありません。 それでも、次の目標は達成するように、より前向きになっていくことが大事です。
一つ一つはゴールに比べれば小さいかもしれません。 それでも、前に進んでいる自信をつけるためにも、金曜日は達成できた目標を喜びましょう。 その喜びをまた味わうために、また次も頑張っていきます。
金のリンゴ
スタートアップ企業はみんな金のリンゴでつまづく。重要な会議で公演するチャンスが舞い込むかもしれない。大口の顧客が自社のためだけにソフトウェアを改良してほしいと依頼してくるかもしれない。あるいは、毒リンゴのような不良従業員がいて、経営者の足を引っ張るかもしれない。スタートアップのライバルは時間だ。そして、時宣を得た実行のライバルは"脱線"だ。 OKR(オーケーアール)
事業を推進するにあたって、「金のリンゴ」の存在は本当に厄介です。 なぜなら、それは一見すると成功と見間違えてしまうほど誘惑が強い存在ですが、客観的に見ると当初の目標への道からは脱線してしまう代物だからです。
スタートアップに限らず、新規事業はスピードが生命線な場合が多いです。 プラス面の誘惑(講演依頼や上客からの仕様変更依頼など)に限らず、マイナス面での誘惑(人事評価・解雇の先送りなど)も事業推進の方向を見失わせてしまう要因になってしまいます。
こうした金のリンゴの誘惑に負けず、正しくOKRをシビアに見つめていくことが、事業を進めていく大きなポイントになります。
感想
正直に言うと、読む前はそんなに期待していなかった本でした。 読んでみて、非常に現実的で、非常に理にかなった方法論だなと感じました。 今年読んだ本の中では、個人的な感想では、一番タメになった感じがします。
- 作者:クリスティーナ・ウォドキー
- 発売日: 2018/03/15
- メディア: Kindle版
最近はKPIとかも古くてOKRとか言うんですね。 この手の話は、最新のモノがどんどん出てきて大変ですが、なるべく最新の手法を追いかけて最良のものを選択できるようにしたいと思います。