以前、キャリアに関して本を読んで勉強していました。
今年もこの時期は「キャリア形成ってどう進めたら良いんだ?」と考えることがあり、メルカリでキャリア形成関係の本を買い漁って読んでいました。 今回はそのアップデートでいろいろ勉強してみたので、今回は書籍等にかかれているキャリア形成に関する"世間の理想"をまとめていこうと思います。
昨今では自律的なキャリア形成が重要とされている
社会人として働いていく上で、多かれ少なかれキャリアというものを考えるタイミングがあるのではないでしょうか?
キャリアとは、過去の職務経験や、それにともなう計画的な能力開発連鎖のこと。とくに仕事や就職、出世のイメージで使われる言葉です。 キャリアとは?【仕事での意味を簡単に】開発方法、デザイン - カオナビ人事用語集
このキャリアに関してですが、人生100年時代とも言われる時代ではこれまでの「キャリア」と大きく変わろうとしている気がします。
今の働き盛りの世代の人が自身のキャリアについて不安視することが多くなっているのかなと思います。 実際、そのような実態を示す記事も見つかったりするので、「今の働き盛りの世代の人が自身のキャリアについて不安視する」という点についてはおそらく確からしいと個人的には考えています。
さて、実際にどんな点が不安に思っているのでしょうか? 個人的に思う、キャリアについて不安視されている背景は大きく3つかなと思ってます。
- 終身雇用制の崩壊問題
- 老後2000万円問題
- 働き方の多様化に伴ってロールモデルの欠如
これらの背景によって、これまでよりも「キャリア形成について真剣に考えるべき」という考えが強まっているように感じます。
終身雇用制の崩壊
昨今では、終身雇用制度が崩れ始めつつあります。 実際に、2019年にトヨタの社長ですら終身雇用制を維持するのは難しいとの見解を示しています。
他にも、経団連の会長も同様の趣旨のことを言っていたりします。
終身雇用制を維持することが難しいということは、社会人が同じ会社で定年まで勤め上げること自体が難しくなりつつあるということを意味すると思います。
こうした終身雇用制への問題提起は何年も前から議論されており、こうした疑問が当たり前のなか育ってきた若い世代を中心に「このままこの会社にいて自分は将来やっていけるんだろうか?」といった漠然とした不安が発生し、「自分のキャリアは自分でなんとかしないといけない」と考えるようになっているのかもしれません。
老後2000万問題と雇用の流動性
終身雇用が保証されなくなるだけでなく、現在の社会人は「老後20~30 年間で約1,300 万円~2,000 万円が不足する」見通しのレポートが金融庁から出されています。
年金の他に大きな蓄えをしておかなければならないということで、老後の生活を送っていけるかを不安視するようになっています。
なんにせよ、老後に向けた資金繰りは大きな悩みの種になっているように思われます。
働き方の多様化
また、現在は働き方の多様化も進みつつあります。
以前は新卒一括採用で入社した会社に勤め上げる中で出世していくのが一般的だったと思います。 ところが昨今では転職等も一般的になりつつあり、副業やフリーランスという働き方も一般的になりつつあります。
また、ジョブ型雇用を推進しようとする動きも見られます。
これまでのメンバーシップ型雇用とは異なり、専門性の高い業務を遂行することを求める組織も今後増えていくでしょう。
別の観点では、最近ではリモートワークも増えてきた関係で、地方からリモートで働くという選択肢も出てきました。 特にCOVID-19以降リモートワークを許容する企業が出てきており、全国どこからでも働くことができる自由度が生まれています。 このように、現在では一昔前よりも働き方の選択肢が広がり、自由度が大きくなってきています。
このように働き方の自由度が広がるのに伴って、我々はこれまで当たり前だったものとは異なるキャリア進むことが多くなるはずです。 これにより、自身の理想の働き方・キャリアを自身でコントロールすることが暗に求められています。
「自身のキャリアを真剣に考えよう」という風潮
個人的に感じているキャリアについて不安視されている背景をまとめると、下記のような感じだと思っています。
- 終身雇用の崩壊により、同じ会社で定年まで勤め上げることがそもそも現実的ではなくなってきている
- 自身で老後の生活に多くの資金を準備する必要が出ており、年金の受給に対して不透明な点も多い
- 働き方の多様化によって、身近な人がキャリアの参考にならなくなってきている
このような漠然とした不安により、これまでより自分の人生について自分で考えて行動に移すことが求められる社会になってきていると言えそうです。 こんな流れもあってか、最近では「自身のキャリアについて真剣に考えて主体的にキャリア形成を進めていくんだ」という風潮が高まってきているように感じます。
キャリア形成の理想と現実
「キャリアについて真剣に考えたほうが良さそうだぞ?」という風潮はありますが、キャリア形成を戦略的に行うのはそう簡単ではありません
キャリア形成の理想
よくあるキャリア形成の考え方について考えてみます。
自身のキャリアは自身で選択・形成していく必要があるとすると、計画的・効率よくキャリア・経験を積んでいくことを考えるかもしれません。 シンプルに考えれば自身でどんなキャリアを進むのがプラスになるかから逆算して、自身が経験すべきことを選択する最短経路を目指すのが良さそうです。
- 仕事を通じて成し遂げたいことを設定する
- 成し遂げたいことから逆算して、自身に必要な経験を積み、スキルを身につける
- 経験・スキルアップに伴って収入を増やす、専門性の高い仕事に従事する
例えばプロダクトマネージャーになりたい、と考えるのであれば、実行スキルや戦略的スキルなど、必要なスキルは多岐にわたるでしょう。 そのうえで、「自分には戦略的スキルが足りない」と思うのであれば、ビジョン作成や戦略フレームワークを使った分析などを業務で行うことが良さそうですよね。
このように、成し遂げたいことから逆算してスキルを身に着けていくと無駄なく効率的にキャリアを歩めそうに見えます。
一旦、考えられるモデルケースを挙げたところで、これを進める際に発生しそうな問題点を考えます。
問題1. そもそも「取り組みたいこと」がない
キャリアプラン策定の際にはWill Can Mustのフレームワークが使用されたりしますが、このWill(やりたいこと)を考えることに苦手意識を持っている人は意外と多い気がします。
一方で、キャリア形成を戦略的に進める上で、「仕事を通じて取り組みたいこと」が設定できないとうまく計画を立てることは難しく感じるのも事実です。 意外と「やりたいことがない」ということで、不安に感じたりコンプレックスに感じる人は多いのではないでしょうか?
問題2. 自分の経験を選べない
自身が取り組みたいことが見つかったとしても、そこに向けて必要な経験を順調に詰めるわけではありません。 キャリア形成の厄介な点として、キャリアを形成するのは自身の経験であるという点があります。
1999年、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授は、「プランド・ハップンスタンス理論(計画された偶発性理論)」でこんな事を言っていたりします。
キャリアの8割は偶然決まる
キャリアは自分の経験の延長線に形成されていく側面がありますが、何を経験するかの8割は自分でコントロールできることではなかったりします。 自分のやりたいことだけでキャリアを構成できるわけではなく、ときには自分のやりたくないことをやりながら働くことも必要になってくるのが難しいポイントです。
このような状況だと、人によってキャリアを形成する日々の経験がそもそも異なるので、狙ってキャリア形成を進めていくということが難しく感じてしまうのは無理もないことのように思います。
問題3. 未来のことなんてわからない
自身が期待した経験を詰めたとしても、取り組みによって得られた経験が技術的進歩や業界動向によって価値が低くなってしまう可能性も捨てきれません。
例えば、商材自体が好きで、何らかのメーカーの自身の部署で出世する道を進もうと考えたとします。 この場合、こんなリスクは考えられたりしないでしょうか?
- 商材の代替品が市場に登場して衰退産業になってしまった
- 自身の担当していた業務が技術進歩・会社の方針転換によって部署ごとなくなってしまった
成長産業であろうとも、5年先もそうであるとは限りません。 技術の進歩によって不要になる仕事があるのは歴史が示しています。
そんなこんなで、キャリアの目標を定めようにも、「このキャリアで進み続けて大丈夫なんだろうか?」という不安は常に付きまとうように思われます。
経験をコントロールする
キャリア形成は大事、だけど意図してキャリア形成を進めていくのはとても難しいと言うことがわかりました。 ここまで来ると、「じゃあどうしたらいいんだよ…」となってしまうので、書籍を読んでなんとなく理解したやり方について見ていきたいと思います。
転職とか副業をおすすめするキャリア関連の本を読むと、おおよそこんな感じに進めていくことが良さそうに思えました。
- 理想イメージを持つ
- 本業で得られる経験と、本業で得られない経験を区別する
- 本業で得られない経験を転職・副業で獲得する
- 得られた経験を元にして新しいポジションへステップアップ
理想状態をイメージする
何をするにも、最初に必要になるのはゴールの設定です。
多くの人は取り組みたいことなんてないのが普通です。
ただし、やりたいことはなくても理想の状態はあるんじゃないでしょうか? やりたいことがあるわけじゃないけど、「なんとなく〇〇歳くらいに昇進して、〇〇歳くらいで次のポジションに行って、これくらいで年収が〇〇円で…」みたいな感じの漠然としたイメージです。 別に何をしているかとかではなく、自分がどんなポジションでどんな待遇になってたいのか、現実的なイメージは多分それぞれあると思います。
なんなら〇〇歳には経営者になってたい、みたいに思う人もいるかもしれません。 別にそれでも良くて、まずはなんとなく頭に思い描いているものをイメージするところからスタートになります。
昇進によってイメージに近づく
理想状態のイメージができたなら、今度はイメージに近づくために必要な経験を積むことを考えます。
昇進したいのなら、昇進に必要な要件を満たすことを考えるのが一番の近道です。 昇進するために必要な経験を逆算して、自分に足りていない経験・成果を作ることを考えます。
やりたいことを表明してチャンスを呼び寄せる
ここまで来ると、「どう考えても自分の力で〇〇の経験は得られない」といった事もあるかもしれません。
どうしても社内の話となると、上司やその上の意向次第になってしまいます。 なので、できることとしてはそれを上司に伝えてキャリア形成に手を貸してもらうのが望ましいでしょう。 上司も認識していないと該当する仕事をふることはできません。 100%できるわけではないですが、確率を上げるという意味でやっておくことでチャンスは呼び込めるかもしれません。
転職によってイメージに近づく
人によっては転職によって、別の会社でイメージする生活を実現することを考えることもあるかもしれません。 転職するには、転職先が求めるスキルや経験を持っていることが必要になってきます。
自社で得られない経験を副業で模索する
ここでも、どうしても自社で得られない経験が求められることもあるかもしれません。 自己学習で得られる知識・スキルであれば自己学習・自己研鑽で努力しようがありますが、経験となるとそうもいきません。
自分にとって必要となる経験を得るために転職をするということも手段としてはありえますが、昨今では副業が解禁されているところも多いかと思いますので、副業によって経験を積むことも色んなところで推奨されています。 所得を増やすという意味以外で、自分のキャリアにとって必要な経験を積むために副業を利用することで、経験をコントロールしやすくなります。
キャリアの軌道を修正する
この辺までで(難易度の大小はありますが、不可能ではないという意味で)キャリアを自分で作っていくことができそうです。
最後に、最初に立てた理想の状態がだんだん変わってくることも考えないといけません。 とくに、社会が変化していくことで過去に描いていた理想が現在の状態のそぐわなくなることがあります。 こうした場合には過去のキャリア戦略をアップデートしていくことが望ましくなります。
また、スキルアップなどの結果、昇進・転職などで理想の状態へステップアップした際には、さらに次の段階を目指す人もいるでしょう。 次のステップアップには、別の経験・スキルが求められるため、そのための経験を積もうと、社内・社外へ経験を求めるためにも次の理想の状態を再確認していくことになります。
どうしても必要な経験を積めない代わりに、別の経験を積んでいることもあります。 そうした場合、キャリアの方向性をちょっと考え直しても良いかもしれません。 いま目指しているキャリアだけでなく別のキャリアを進むのも実は楽しいかもしれませんし、どうしても現状の環境ではうまく進めないとなったら転職を考えるのも一つの手段です。
こうしたキャリアの振り返り・見直しを定期的に行うことで、よりキャリア形成がやりやすくなっていきます。
参考文献
この記事を書くにあたって下記の文献を参考にさせていただきました。
感想
キャリアって難しいですね。 書いてて、自分のキャリア戦略くらいは考えてみてもいいかな、という気持ちになりました。
キャリア戦略を考える上で「自身が成し遂げたいこと」を自覚すること自体が難しそうだなと感じました。 このゴールから逆算して日々の行動を起こすのが良さそうということは理解できるんですが、そもそものゴール設定ができていないとそれもできませんし。おそらく「自己認識・自己理解」といったテーマになるんでしょうが、そのへんが一般人には難しそうだなと感じました。